+ ロシア@ 皆既日食・移動編 (2008.08.21-25)
 さて、ウランバートルを出発した国際列車は、約36時間後にロシア・イルクーツクに到着した。

 ・・あっさり書いたけど、36時間て相当長いよ?なんでそんなにかかるの?時速何kmですか?
 だいたい景色だって大して面白くないし、唯一の見所である世界最深の湖・バイカル湖を夜中に通過するとは
どういうこと?

 というのも、モンゴル側の国境の町、ロシア側の国境の町で、それぞれ出国・入国手続きのため数時間の
停車があるためである。バカみたいに長い30両編成くらいの電車なのでそれなりに時間がかかるんだろうが、
もうちょっと何とかならんもんか。

 ちなみに座席はモンゴル国境−ウランバートルまでの電車と同じく4人のコンパートメントで、そこに3人しか
いなかったのでいつでも寝れるし座れるし、快適な移動だった。
 同室のオーストラリア人夫婦も、
かなり足が臭かった以外は親切でナイスなおじさまおばさまだった。

 また、この電車内ではついにKHAN ALTAYに行くという人にあった。しかも日本人、クラトさん&サチさん夫婦。
かなり旅とパーティーの達人で、結婚するのにサチさんが出した条件は「一生旅を続けること」だったという。

 新婚旅行で世界一周という話はわりとよく聞くが、その旅を最後に「やっぱり今後は安定よね」といって旅や
パーティーから足を洗ってしまう夫婦が多いはず。そんな中、夫婦で2度目の世界一周旅行に出ている二人は、
世間や世論がどうのこうの言おうが、とても幸せで充実した人生を送っているなぁと感じた。

 ちなみにこの二人には後々とてもお世話になることになる。

 さて、イルクーツクといえばもちろんバイカル湖である。ここまで来てバイカル湖を見ない旅行者などまず
いないだろう。どちらにしろパーティー会場まではまだ遠い、どこかで泊まらないといけないならここしかない
と思い、ホテルを探そうと電車を出た。

 すると、
豪雨。

 とても止みそうにない降り方である。バイカル湖どころか、ホテルを探すのもおっくうだ。

 念のため、次の目的地であるノヴォシビルスクまでの電車の時間を聞いてみると、2時間と待たずに電車が
ある。
 これは神様が先を急げと言っているに違いないと思い、即決でチケットを買い、車内での食べ物や飲み物を
駅構内の売店で買い、電車に乗り込んだ。クラトさんたちは2日後の電車のチケットを予約していたため、
ここでいったんお別れとなった。

 そして電車は順調に進み、
約30時間後にノヴォシビルスクに着いた。

 ・・・ロシアでかいよ、あんたでかすぎる。これでもまだシベリア鉄道の真ん中へんとは。

 この電車はモンゴルからのようにドアのあるコンパートメントタイプではなく、二段ベッド(兼イス)が並んである
だけである。僕は上段だったが、ベッドの上に荷物置きがあるため、狭すぎて座れない。昼間は下段に降りて、
下段の人や正面の人とコミュニケーションをとりながらワイワイするのがツウのロシア人の楽しみ方なようだが、
僕は何しろロシア人とのファーストコンタクト。身なりのいい男はみんな悪徳警官に見えるし、ガタイのいい男は
みんなヒョードルに見える。
 僕の下段は美人ママと可愛い子どもだったのだが、「何よこの異邦人は」的なママの視線に耐えれず、自然と
上段に上がって寝たきりの生活を送っていた結果、入院患者のように体が衰えていくのを感じた。

 ようやくノヴォシビルスクに着き、ウランバートルでロンリープラネットを見ながら作成した手書きの地図を頼り
にホテルを探すが、全く見つからない。駅の目の前にある明らかに高そうなホテルに入ってみたが、当然のよう
に一泊一万円以上する。だいたいノヴォシビルスクは工業都市で、観光客が滞在する場所ではない。
 まいったなーと思いながらうろうろしていたところ、

 
また豪雨。

 うーん、これではホテル探しどころではない。ていうか、皆既日食が見れるか非常に心配になってきた。

 とりあえず駅に戻り、旅行者またはパーティーに行きそうな人を探す。
 すると、明らかに旅行者っぽいバックパックを背負った二人組を発見。これはロシア人じゃないに違いない
と思い、話しかけてみる。

 すると、彼らは偶然にもKHAN ALTAYに行くという!
 君もホテルに泊まらないで一緒に行こうと誘われ、これは神様が先を急げと言っているに違いないと再度
考え、疲れて汚れきった体にムチ打って次なる町・バルナウルまで彼ら、アントンとアレクセイと共に行くこと
にした。

 バルナウルまで約4時間、その間にノヴォシビルスクで買っておいたウォッカを3人で1ボトル空け、夜11時
過ぎなのにスピーカーで音楽をガンガンに鳴らし、通りかかった「シベリアの男」がウォッカを一本追加し4人で
一本空け、ベロベロになって便所で吐いていつの間にか就寝。超迷惑な客である。
 夜中の1時に車掌に叩き起こされ、とりあえず忘れ物の無いように全て確認して出たはずが、ロシア語の
指差し会話帳を置き忘れてきた。ロシア入国2日目にして。
 「シベリアの男」が頼んでもないのに「シベリアのウォッカの飲み方を教えてやるよ」と言い始めたのがマズか
った。ちなみにこの男、確かに1杯の量は半端じゃないが、3杯くらいでフラフラになって寝てしまった。

 さて、この電車には僕以外に3人の日本人が乗っていた。ヤスさん、ヨコさん、マツさん。3人ともパーティー
ピープルで、KHAN ALTAYに行くという。ていうか、こんなレアな駅にいる日本人はみんな同じ目的だろう。
 彼らも特にホテルのあてがないというので、アントン・アレクセイに率いられホテル探し。そのへんのタクシーの
運転手に聞いて安ホテルに連れてってもらう。ドミ(4人部屋?)で一人300ルーブル(約1400円)はロシアでは
格安である。なんせ日本の某ガイドブックには1泊1000ルーブル以下の宿なんて乗ってない。
 アントンとアレクセイはタクシーの運転手に気に入られ、夜中の3時近いのにこれから一緒に飲みにいくという。
ちなみに彼らはモスクワからここまでヒッチハイクでノンストップで来て、しかもさっきのウォッカでベロベロである。
ロシアの若者の体力はすごい。日本人4人は倒れるように就寝。

 翌日、ベロベロのアレクセイに絡まれて7時頃起こされるが、もうちょっと寝かせてと言って11時頃まで寝る。
それから今後1週間分の食料を買出しし、ハイエースを1人1000ルーブルでチャーターして、KHAN ALTAYの
ある町オングダイに向かう。
 ちなみにこのバルナウルでレジストレーション(外国人登録)をしようとしたが、やたら待たされた上に別の所
に行けといわれ、もうめんどくさくなって諦める。後々どうなるか分からんけど、まぁなるようになるやろ。

 オングダイまでの道は絶景の連続。アルタイ共和国は、日本人にはなじみがないが、ロシア人にとっては
トレッキングやカヌーなどのアウトドアが出来る場所として、また中央アジア系やモンゴル系の民族が住み、
独自の文化が未だ受け継がれている場所として有名らしい。
 オングダイに近づくにつれ、山はどんどん近くなり、見たこともないようなエキゾチックな目をした人々や
モンゴルで見たような浅黒い肌の人々が増えていった。

 そして約8時間後、もう夜も更けてからようやくオングダイのはずれにあるベースキャンプに到着した。
 そこかしこでジャンベの音が聞こえ、一軒だけあるインフォメーションセンター兼バーではトランスもかかって
おり、けっこう盛り上がっている。

 しかし、
とにかく寒い。夜の12時前でここまで寒いとは・・・。

 と、アントンが「ロシアのサウナがあるらしいぞ!いこうぜ!」と言う。ロシアのサウナか、面白そうだ。なにより
体を温める必要がある。
 そしてサウナの入り口に行ってみると、全裸の男女が奇声をあげながら中から出てきて、そこにおいてあった
冷たい水を頭からぶっかけて、また中に入っていった。

 ・・・中では何が行われているのでしょうか?

 服を脱ぎ中に入ると、客が全員ドレッド頭のロシア人である以外は日本のそれと変わらない。
 東洋人が珍しいんだろう、すごいテンションで「どこから来たんだ!?」「日本か、ウェルカム!」と歓迎して
くれた。中には「仏教について教えてくれ」と、さすがにヒッピーらしいことをいうやつも。

 そうこうしてるうちに、アントンが「さあシンヤ、ロシアのトラディっショナルなサウナの使い方を教えてやるよ」
と言い始めた。
 そして、床に寝かされ、側に置いてあった湯の入ったドラム缶の中からなにやら小さな葉っぱがたくさんついた
大きな枝を取り出し、その雫を熱せられた石にかけて温度を上げ始めた。そして、その枝で、ムチのように
体を叩く!
 その作業を繰り返していると、だんだんと室温が上がり、湯の温度も上がり、枝の雫も熱くなる。それで体を
叩かれ続けること数回、ついに耐え切れないほどの室温と水温になり、「もう無理!!」と叫んだ。
 すると、「よし来い!」と外に連れ出され、極寒の中で冷たい水をぶっ掛けられた。

 冷たすぎる!でも超気持ちいい!そして最後は再びサウナの中に入り、温かいお湯を浴びて暖まって終了と
なる。

 考えてみれば日本の銭湯でも、限界までサウナに入り、冷水を浴び、それから温泉につかるというのは普通
である。場所は違えど人間は同じようなことを考えるのか、それともロシアの文化が昔は大陸の一部だった日本
と繋がっているのか、理由は分からん。

 どちらにせよ、ウランバートルを出て約100時間後、ようやく目的のKHAN ALTAYベースキャンプに辿りつき、
ロシア人パーティーピープルの洗礼を受けて幸せを感じることができた。



    ↑イルクーツク行きの電車から。あの湖をバイカル湖と思い込むことにした。



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